結び狐は天に愛されし者、生まれながらにして神となる資格を持つが、三千年の間、天の理の試練を乗り越え、神の座に就いた結び狐は一匹もいなかった。彼らは人の世で縁結びの女となり、婚礼の喜びを糧に信仰の力を得て、功徳を積み、昇仙を願う。しかし、功徳帳に記された膨大な数字は、口にしてはならぬ罠であった。俗世のしがらみを断ち切ってこそ、真の神の座に就くことができるのだ。
帝都にはこんな言葉が伝わっている。「良縁を望むなら、城東の春姫に頼むべし」。春姫が手掛けた縁談は、どれも円満に終わるという。近頃、都の貴族である方家の跡継ぎが「子宝に恵まれぬ」と断言されたかと思えば、その直後には結び狐様の社が建てられ……