
兄が私を屋敷から身請けするための金を貯め終えたその日は、おめでたい日だった。 屋敷で最も可愛がられている若君の元服の儀で、大変な賑わいだ。奥方様は誰が屋敷を出るのかよく聞き取れず、適当に人を遣わして私の身売り証文を返させた。 小さな包みを手に裏門まで歩いて行くと、若君の下男にばったり会った。彼は私をきつく睨みつける。 私は彼の主である若君と喧嘩して、何日も口を利いていなかった。 彼はわざと、若君の許嫁がどれほど美しく、気前が良いかを話し始めた。 「気まぐれに下さる褒美ですら、鶏卵ほどの大真珠だ!燕、お前のような下女ふぜいが何で張り合える?側室にしてやると言われても、もったいないくらいだ!」 私はつられて笑った。 「では、若君はこれからお幸せですわね。」
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